1型糖尿病患者さんへ
当院では糖尿病専門外来を行っており、1型糖尿病の患者さんの診療も多くさせていただいております。
1型糖尿病は、生活習慣とは全く関係なく、特にたくさんご飯を食べたわけでもなく、特に太ったわけでもなく、ある日突然インスリンが出なくなってしまい、糖尿病になってしまいます。
自分の免疫がなぜか自分の膵臓にあるβ細胞を壊してしまうことが原因といわれています。
そのため食事をとる際にはインスリンを打たないと血糖値が上がってしまいます。また食事とは別に、ご自身が作り出している糖を処理するために基礎インスリンが必要にもなります。食事の中の糖、ご自身が作り出している糖、これらの糖を細胞内に送り込むためにインスリンの注射が必要になるのです。
血糖値においては、糖の多い食事か、たんぱく質や油が多かったか、またパンか白ご飯かチャーハンかなどでも、血糖値に大きく影響します。
またクラブ活動でたくさん走った、筋肉トレーニングをした、休みだったのでほとんど運動しなかったなど、どの程度活動したかでも変わります。
普段、食事用のインスリンを10単位を打っているのに、運動量が多ければそのインスリンを打たなくても血糖値が上がらないこともあります。逆に運動量が少なくなれば普段通りきちんとインスリンを打っているのに、血糖値が上がってくることもあります。運動量の変化があっても血糖値が変わってくるのです。
体調も血糖値に大きな影響を与えます。例えばインフルエンザになって高熱がでてしまった。その時には食事もほとんど食べられていないのに血糖値が高くなることがあります。
血糖値に応じて補正のためにインスリンを打たないといけないこともあります。また仕事でかかるストレスや車通勤から電車通勤になったなどの環境の変化、性周期(月経)なども血糖値に大きく影響することがあります。
その他、寒いと血糖値が上がりやすくなるなど季節においても血糖値が変化します。
本当に色々なものの影響を受けて、血糖値は変化しています。
院長は1型糖尿病の専門施設で研鑽を積み、SAP療法、インスリンポンプ療法、強化インスリン療法などさまざまな糖尿病治療に関わって参りました。
患者さんの希望をお聞きし相談し、例えば超高齢の方なら急性期の合併症を起こさないような目標を設定し、1日1回の注射で済むようにインスリン製剤を選択したり、また年齢が若く合併症予防が必須の方であれば、SAP療法(日本国内で可能な最先端の1型糖尿病治療の一つ)や応用カーボカウント法も導入し、良好な血糖コントロールと生活の質をバランスよくとり、患者さんの生活が血糖値に縛られないようにサポートできるようにと心掛けております。
特に最近のSAP療法は血糖値の補正が自動で行われ、今までは「血糖値が高かったら血糖を下げるためにインスリンを打ってね」とお伝えしていましたが、それも不要になってきています。またSAP療法はせずとも、インスリンポンプだけをお使いの方もいらっしゃいますし、ポンプを使わずにインスリンの皮下注射だけで良好な血糖コントロールを達成されている方もたくさんくいらっしゃいます。
当院ではSAP療法・インスリンポンプ療法・インスリン強化療法の導入は、患者さんのライフスタイルを変えないよう、外来通院で行っております。
膵疾患に対して膵臓全摘術をされている方も、インスリンが出なくなってしまいますので糖尿病になってしまいます。膵臓はインスリンだけでなくグルカゴンという血糖値を上げるホルモンも出しています。膵全摘になると、このグルカゴンもなくなっていますので、容易に低血糖になってしまいます。そのためより慎重なインスリン投与・血糖管理が必要になります。
主病の治療の妨げにならないように、糖尿病内科医として血糖コントロールを行えればと尽力しております。
このように血糖値にはいろいろな要素が関係しています。
当院では糖尿病専門医をはじめ、看護師による療養上のサポート、管理栄養士によるカーボカウント法の導入など、各分野のエキスパートが1型糖尿病の方の血糖コントロールを、さらには血糖値にしばられず自由に生活を送れるようサポートします。
糖尿病でお困りの方がいらっしゃいましたら、ご相談いただければと思います。
糖尿病は、患者さんごとに、ライフスタイルや病歴が異なります。
当院は、患者さんと相談しながら患者さんに応じて治療の選択や組み合わせを考え、よりよい血糖コントロールを目指します。
こんな悩みありませんか
- 検診でひっかかった
- 糖尿病の疑いがあるといわれた
- 治療を中断しているが再開を検討している
- かかりつけ医を探している
- 現在の糖尿病の治療が合わない気がする
- 自分が糖尿病かどうか知りたい
糖尿病とは
糖尿病とは慢性的に血糖値(血管の中にある糖の濃度)が高くなった状態をいいます。
それなので血管がダメージを受け色々な病気を引き起こします。
例えば腎臓(尿を作るところ)、眼(ものを見るところ)、神経(動かしたり感じたりするところ)などをダメにするだけでなく、脳梗塞(脳の血管がつまる病気)、心筋梗塞(心臓の血管がつまる病気)などの一旦おこると命に係わる病気の原因にもなりえます。
そのため、とても怖い病気に思えるかもしれませんが逆に考えると糖尿病をしっかりコントロールすることで、これらを起こりにくくすることができるということです。
当院は病気のことで患者さんの生活が制限されないように、
治療内容などは患者さん本人と相談しながら決めていきます。
また糖尿病は高血圧症、脂質異常症を合併しやすい病気で、
脳梗塞や心筋梗塞などを引き起こしやすくします。
院長は循環器内科領域である高血圧、脂質異常症についても
数多く診療しておりますので、ぜひ相談してください。
患者さんの健康寿命を延ばすことが院長含めたスタッフ一同の目標です。
糖尿病の症状
- のどが渇く
- 夜に何度もおしっこに行く
- 最近体重がやせてきた
- 疲労感がある
- 皮膚が乾燥する・かゆい
- 手足の感覚の低下、痛みがある
- 感染症によくかかりやすい
- 目がかすむ
- 性機能の問題(ED)
糖尿病の種類と原因
2型糖尿病
2型糖尿病は、10人に9人以上はこのタイプです。若い人でも発症する場合もありますが、40歳を過ぎてから発症する場合がほとんどです。食生活などの環境因子と体質(遺伝)の組み合わせで起こると考えられています。
2型糖尿病は、このような人に起こりやすいと言われています
- 40歳以上
- 肥満
- 運動不足
- 家族に糖尿病の患者がいる
1型糖尿病
1型糖尿病は急性発症1型糖尿病、劇症1型糖尿病、緩徐進行1型糖尿病の3つに分類されます。
前2つの疾患は短い経過で発症し、ひどい場合には意識もなくなってしまうこともあれば「のどが渇いた」「夜間寝られないくらいおしっこにいく」などの症状が出やすく、基本的には入院での治療が必要です。
緩徐進行1型糖尿病は2型糖尿病のような振る舞いをしながら長年かけてゆっくりとインスリンが出なくなっていく病気です。検査をしないと分からないことも多く、2型糖尿病として治療されていることも多々あります。
妊娠糖尿病
妊娠糖尿病とは妊娠中に発見される耐糖能異常(血糖値が高くなること)です。
妊娠中はおなかの中の赤ちゃんに栄養を上げないといけないので血糖値が上がりやすくなります。そのため一旦、妊娠・出産が終了すると血糖値もよくなり、耐糖能異常はなくなることもあります。
しかしこのような方は糖尿病の発症もしやすくなりますので定期的な血糖値の確認が必要になります。
その他(糖尿病を発症する原因)
- 治療に使用した薬剤
- ホルモンの異常による内分泌疾患
- 膵疾患、肝疾患
- 遺伝子異常など
糖尿病の検査(診断)
慢性(ずっと)の高血糖状態(血管の中の糖の値が高いこと)を証明し糖尿病の診断となります。
早朝空腹時血糖検査
10-14時間以上の空腹の時間をあけて朝の9時頃に採血を行います。
随時血糖検査
自由な時に採血した血糖値です。通常は200mg/dlを超えません。
75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)
75gOGTTは75gの糖が入った甘い飲みものを飲んで血糖値を確認します。白ご飯にするとお茶碗1杯半200gくらいの糖になりますが、これを短時間で摂取します。糖尿病でない方は多い量の糖が入ってきても、うまい具合に処理できるため、少なくとも血糖値200mg/dl以上にはなりません。
しかし糖尿病の方はそれができず血糖値が上がってしまいます。これを確認することで糖尿病を診断していきます。
糖尿病の治療
糖尿病治療において食事・運動療法、薬物療法が3本柱になります。いずれも大切な治療になりますが、メインで行うのは患者さん本人なのです。とはいえ、食事を極端までに一生懸命我慢することは長続きはしませんし、逆に高蛋白質食ばかり食べると心血管イベントが増加するなどの悪影響もいわれています。
持続可能な食事療法を長期的な視野に立ち患者さんのサポートをすることが必要になります。そのため薬剤の選択については食事療法をサポートする薬剤もたくさん使われます。「ダメとは分かっていても食べ過ぎて、へこんでしまう」「全然我慢できない」などにも、サポートし食事療法を続けやすくするような薬剤を選択していきます。
食事療法
サルコペニアやフレイル、obesity paradoxなどを背景にして、最近は食事療法の考え方が大きく変わっています。当院では日本糖尿病学会が推奨しているもので患者さんにお話ししています。
食事療法においては規則正しい生活を送りながらきちんとバランスがとれた食事を心がけることなどいわれています。しかし仕事が遅くなったり、食事のリズム・内容を家族に合わせないといけなかったりと、これができないのが実際です。
当院では正しい食事療法の考え方は当然ながらお伝えいたしますが、実生活にそえるようサポートしていきます。病気のことで患者さんが制限されないように、患者さんがいきいきと生活できるようにサポートすることが当院の基本理念であります。
栄養士による栄養相談
当院では糖尿病や脂質異常症、高血圧などの改善に食生活の見直しが必要だと判断した場合は、栄養士による個別の栄養相談を行っております。普段の食生活や家族背景などをお伺いし、患者様が継続して取り組める食事療法を一緒に考えていきます。食事から糖尿病と向き合い、毎日をより健康に過ごせるように今から取り組みましょう。
運動療法
運動療法もとても大切な治療の柱です。有酸素運動、レジスタンス運動、ストレッチ運動、バランス運動などが推奨されておりますが、運動のためだけに時間を確保することは意外と難しくある期間はうまくいったとしても、持続可能なところまではなかなか難しいこともよく経験されます。
当院では運動療法の基本はお伝えしますが、運動に対する考え方自体を変えたり、普段の生活に組み込んだエネルギー消費の方法(ニート:NEAT:Non-Exercise Activities Thermogenesis)をお伝えしたりとずっと続けられる運動療法をサポートしていきます。
実はこのニートという考え方、とてもすごいんです。例えばパソコンを打つときは立ちながらするなど、座る時間を短くすることで1日あたり160分程度たつ時間が長くなったとしましょう。これはご飯にして2杯分のカロリーが消費されることになり、1週間続けるとフルマラソンを走ったカロリーに相当します。毎日できる範囲で立つようにするだけでフルマラソンを走ったことになる、少しずつコツコツすることがとても大きなものになるのです。
運動療法で期待される効果
- インスリンの効きが良くなる
- 肥満の抑制・減量効果
- 血糖値が下がる
- 高血圧や脂質異常症(高脂血症)の改善
- 筋肉・筋力の維持
- 気分がスッキリする など
一生懸命運動することはとてもいいことなのですが、注意することもあります。
例えば、糖尿病網膜症が少し不安定な状態では網膜症が進行することがあります。「どのような内容なら大丈夫だがここまでしてしまうとダメ」「今の血糖値ならこの運動はいいが、それ以上の血糖値なら運動をすることで逆に血糖値が上がってしまう」など伝えておくことが多くあるため、院長に相談してください。
薬物療法
最近はとても多くの薬剤が出てきています。その中でヨーロッパやアメリカでは「この患者さんは心臓に病気があるので、これを使いましょう」など、個人がもつ病気に応じて処方するお薬のガイドライン(決まりみたいなもの)があります。一方で日本では、はっきりとした薬剤選択のガイドラインはないのが現状です。
当院では糖尿病治療を専門としており世界基準にのっとった上で日本人の特性に合わせた薬剤選択を行っております。
こんな方はインスリン注射が必要です
- インスリン分泌が低下した方
- 腎臓や肝臓に機能障害がある方
- 急性膵炎・慢性膵炎・膵臓を手術された方
- 薬を飲んでも血糖値が改善しない方
- 手術後など大きな怪我をしている方
- 妊娠中や妊娠を希望している方
- 1型糖尿病の方
インスリンは血糖値を良くして合併症の予防にいい影響を与えますが、使い方を間違えると体重が増え肥満の原因になったり、重症な低血糖を引き起こし場合によっては意識がなくなり誰かの助けがないと低血糖から回復できない状態になりえます(重症低血糖といいます)。
また低血糖は脳・心などへの悪影響を引き起こし、認知機能が低下したり(場合によっては認知症も引き起こす)、心臓の不整脈や心筋梗塞などにつながることも報告されています。
インスリンを使う目的はあくまで患者さんにいい影響を与えるためです。糖尿病が悪くなっているときというのは体の中ではインスリンが足りない状態です。そこにインスリンを外から打ってあげると、体(特に膵臓)はホッとして、休むことができます。この休めている状態が実は大切で、インスリンを頑張って作り続けないといけないのが毎日、365日、何年も続くと、徐々に膵臓は疲れ切りインスリンを出せなくなります。
またインスリンを補充させることで体(特に膵臓)を休めてあげたなら、内服のお薬の効きもよくなることがよくよく経験されます。インスリン治療が必要と言われたとがっかりしないでください。病型にはよりますが、一時的な使用になることもよくありますのでまずは相談してもらえたらと思います。
当院では希望があり、適応があった場合はインスリンポンプ療法を導入しています。
院長は近畿大学病院や明石市民病院で1型糖尿病(インスリンがでない糖尿病)・膵性糖尿病(膵全摘出・膵部分切除の術後や膵石灰化のある方の糖尿病)の患者さんにインスリンポンプ療法を入院・外来問わず数多く導入してきました。外来導入ではポンプの使用方法からカーボカウント、さらに希望されればSAP療法まで複数回にわたり指導いたします。2022年1月20日からメドトロニック770Gが日本でも使用できるようになりました。ひとつ前の機種であった670GはSAP療法下でですが低血糖になりそうであれば基礎インスリンを自動的に中止する機能がついていました(SAP療法:血糖値が常にわかるようにしながらインスリンポンプを使用する療法)。今回使用できるようになった770GはSAP療法中、高血糖になれば自動的にインスリンを注入する機能も追加になりました。ほぼ人工膵臓のような素晴らしい機能だと思います。
ご希望があれば当院で外来導入致しますのでお問合せください。
糖尿病の症例