循環器内科の症例4
循環器内科の症例4
心臓弁膜症の方です。心臓の弁には僧帽弁や三尖弁、大動脈弁などがあり、血液を一方方向に流す役割があります。
この弁の機能が悪い場合を弁膜症といい閉鎖不全(閉じが悪くて一方方向に流せない)と、狭窄症(出口が狭くて血液を流しにくくなる)の2つがあります。
この方は胆嚢炎に対する胆嚢摘出術を受ける予定でした。しかし基礎疾患として2型糖尿病をお持ちであり、手術を担当する外科の医師より血糖コントロールを依頼され私が介入いたしました。血糖コントロールも良好になり手術も無事終了し退院となりました。
退院後に私の糖尿病内科外来を受診、その際聴診器で心臓の音を聞いてみると重度の僧帽弁閉鎖不全症の所見を聴取、また心電図では心房細動が指摘されました。術前に心エコー検査を受けていたので参照してみると重度の僧帽弁閉鎖不全症でありました。これは利尿薬などの内科的な治療では治癒しないことが分かっています(最近はTAVI、MitraClipなどがあり内科的治療の選択肢も増えていますが適応があります)。
本人様に手術が必要な状態であること、ただし現在は心不全症状はあるもののそれなりに生活されており、なかなか手術に踏み切れないこともよくあるが、一度心臓血管外科医の話も聞いてみられてはと提案し受診することになりました。
心臓血管外科医からはやはり手術適応があること、様子をみたとしても今以上よくならないこと、後々は心不全を繰り返し、そうなってしまえば手術を受けられなくなってしまうなど、この僧帽弁閉鎖不全症の自然経過をお話しされたとのことです。
本人様は手術のリスクも理解され手術を受けることになりました。後に私がやっている糖尿病外来を受診され、手術が無事済んだこと、息切れもなくなったし、心房細動も消失、心臓の壁運動もずいぶん改善したことを報告されました。
循環器内科医としては弁膜症は利尿薬などでは治癒しないことを念頭にいれ、適切なタイミング(時期が遅れると手術もできなくなる)で心臓血管外科につなぐことが大切であると考えています。
もちろん患者さんの年齢やADLなどを考え手術を希望されない場合は、お薬の調整で本人様の症状をとり苦痛なく生活をサポートしていくことを、内科医としてもさせてもらうことも多々あります。
高齢の方を診療することが多いので、むしろその場合が大多数ですが。
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